【完全版】コールセンターのマニュアル作成のポイントを解説|目的や内容
近年は、競合他社の存在が大きくなるとともに、自社サービスの差別化が難しくなっています。そのため、あらゆる業界で、顧客の体験価値(購入に関わる体験を通じて得られる、満足感などの心理的な価値)に注目した自社サービスの差別化が図られています。
コールセンターの立ち上げは、体験価値を高める施策として大きな価値を持ちます。コールセンターの主業務である顧客対応こそが、体験価値の本質に大きく関わっているからです。今回の記事は、コールセンターの立ち上げや運用にとても重要なマニュアルについて、作成方法や気を付けるべきポイントなどを解説します。
目次
コールセンターでマニュアルを作成する目的
コールセンターでマニュアルを作成するメリットは、経験のばらつきが出やすい顧客対応において対応品質を均質にできることです。数席の小規模なコールセンターや簡易な問い合わせ対応しかしていないセンターであれば、マニュアル作成・メンテ稼働がなく、経験豊かな先輩オペレーターの顧客対応を見て学ぶことや口頭伝承で、自身の対応品質を磨く方法が一般的でした。
しかし、この方法では顧客対応が属人化してしまい、新米オペレーターと先輩オペレーターのあいだで対応品質にばらつきが出てしまうことが課題でした。
顧客は常に一定のサービス品質を求めているため、顧客対応の対応品質にばらつきがあると、顧客満足度の低下につながります。顧客満足度が低下すると、クレームの発生につながるだけでなく、ロイヤル顧客(お得意さま)の喪失や潜在顧客への悪印象などさまざまなデメリットが生じます。
そのため、対応品質のばらつきを最小限に抑え、属人化を解消するためにもマニュアルは重要です。
コールセンターのマニュアルを作成する際のコツ
コールセンターのマニュアルを作成する際に、意識しなければならないポイントがいくつかあります。こちらで紹介する3つのポイントを抑えることで、内容に不足がなく利便性の高いマニュアルを作成できます。
マニュアル作成の責任者を決める
コールセンターで使用されるマニュアルは、顧客対応の対応品質に直結するため、それ自体がひとつの商品と考えることができます。そのため、通常のプロジェクトと同様に責任者が誰かを明確にしておくことが重要です。
加えて、責任者を決めておくことで、スムーズに作成を進行することができます。報連相を誰にするか、プロジェクトに関わる意思決定を誰がするか、などが明確になるため、内容の決定や現場と情報のすり合わせの時間が短くなり、効率化につながります。
業務ごとにマニュアルを作成する
コールセンターの顧客対応は、サービスについての情報提供、改善などの要望、クレーム対応などによって求められる知識や対応方法が異なり、業務が幅広いという特徴があります。
事業規模が大きい場合や複数のサービスを展開している場合は、さらに業務が複雑になりがちです。業務が複雑化すると、マニュアルに求められる知識や対応手順が膨大になり、ひとつのマニュアルにまとめることが難しくなります。
顧客対応の複雑化を解消するには、マニュアルを業務のカテゴリごとに分けて単純化することが効果的です。業務ごとに詳細かつ、わかりやすいマニュアルを作成することで、幅広い業務で対応品質を一定のレベルに保てます。
現場とすり合わせる
一番重要なポイントは、オペレーター、スーパーバイザー、経営層などさまざまな分野の方とコミュニケーションを密にとることです。できるだけ多くの方から意見を集めることで、マニュアルの評価を客観的に行えるだけでなく、より実用的なマニュアルが作成できます。逆に、自身の考えのみでマニュアルを作成すると、重要な情報が欠けていたり利便性に欠ける内容になってしまいます。
また、業務ごとにマニュアルを作成する際は、オペレーターにもわかりやすいことが重要です。詳細にマニュアルを作りこみ過ぎると、逆に現場では使いづらいマニュアルになってしまいがちです。現場の声や実際の業務を参考にマニュアル作成をしましょう。
コールセンターのマニュアルに盛り込むべき内容
コールセンターで使用されるマニュアルは、会社によって内容が大きく異なりますが、共通して盛り込まれている内容があります。こちらでは、マニュアルに最低限必要とされる内容を紹介します。 マニュアルを作成する際は、誰が見てもわかりやすいことを意識しながら内容を盛り込みましょう。
会社概要
会社概要とは、設立した年度、本社の住所、会社役員や経営者の名前、資本金や株式情報、経営理念や経営戦略などを指します。会社概要は、コーポレートサイトやサービスサイトに記載されている場合が多く、顧客対応で情報提供することは少ないかもしれません。
しかし、顧客対応は、会社のなかでも顧客と会社の接点を担うため、経営理念や経営戦略を共有できていないと、顧客満足度の低下につながるトラブルを引き起こしてしまいます。きちんと情報共有を行い、オペレーターが自身の所属する会社がどのような考えを持っているか、説明できるようにしましょう。
商品・サービスの情報
顧客対応のなかでも、自社サービスに関する情報提供は、既存顧客と潜在顧客とともに必要となるため、多くある問い合わせです。そのため、自社サービスに関する誤った情報や鮮度の古い情報を提供してしまうと、会社の信頼度を損なう可能性があります。
会社の信頼度は、潜在顧客の顕在化にとても大きな影響を与えるため、顧客対応の落ち度は会社全体の不利益につながります。顧客対応を完璧なものにするために、マニュアルには常に最新の情報を記載しましょう。
コールセンターのルールや規則
コールセンターの業務では、顧客の個人情報や業務機密など、取り扱いがデリケートな情報が多くあります。こうした情報は、取り扱いを間違えると、会社の信用を損なうだけでなく顧客に多大な迷惑をかけてしまいます。したがって、コールセンターのマニュアルには、業務で知り得た情報を正しく取り扱うために、厳格なルールを盛り込まなければいけません。
加えて、社内の規律を守るために必要な就業時間や報連相などの社則、不正や規律を乱した際の罰則についても、すぐに確認できるようにマニュアルに記載しましょう。
ビジネスマナー
顧客対応では、相手を不快にさせないための言葉づかいやメール文面など、守るべきビジネスマナーがあります。しかし、コールセンターの人員は入れ替わりが激しいという特徴があります。そのため、定期的に講習などを開催して、ビジネスマナーを周知徹底しようと行動しても、効果が薄く徒労に終わってしまいがちです。
一方で、マニュアルに記載する場合は、講習を定期開催する場合よりも費用対効果に優れているため、おすすめです。マニュアルに最低限守ってほしいビジネスマナーを、実践しやすいように具体例付きで記載しましょう。
業務に関連するツールの操作方法
近年は、コールセンターへのIT技術の導入が盛んに行われており、電話以外にもチケット管理システム、CRM、FAQシステムなどさまざまなツールを顧客対応で使用しています。オペレーターがツールをうまく操作できていないと生産性が低下してしまうため、各種ツールの操作方法をマニュアルに記載しなければいけません。
操作に関する疑問は、個人の生産性を下げるだけでなく、操作方法を教える側の生産性も下げてしまいます。マニュアルを読めば、ツールに関するあらゆる疑問が解決できるようにしましょう。
トークスクリプト
トークスクリプトとは、顧客対応の台本のことを指します。トークスクリプトによって対応方法を統一できるため、新人オペレーターの対応品質の底上げができます。そのため、トークスクリプトの質によって、対応品質が決まるといっても過言ではありません。マニュアルには必ずトークスクリプトを盛り込みましょう。
トークスクリプトを作成する際は、事前に発生するであろう顧客対応を予想することが重要です。加えて、情報提供に関するトークスクリプトを記載する際は、曖昧な表現ではなく誰が相手でも理解できるように、明確な表現を用いて説明しましょう。
トークスクリプトの作成手順
こちらでは、顧客対応の対応品質に深く影響するトークスクリプトについて、作成方法を解説します。新人オペレーターの対応品質を引き上げ、全体の対応品質を均一にするために、手順どおりに作成しましょう。
ペルソナと課題・問い合わせを想定する
顧客は、自身の悩みを解決するために、コールセンターへ問い合わせをします。そのため、トークスクリプトを作成するには、顧客がどのような悩みを持っているかを知らなければいけません。
まずは、コールセンターで発生する顧客対応を考えるために、ペルソナ(架空の顧客像)を設定しましょう。ペルソナは、年齢、性別、家族構成、趣味などをなるべく細かく作りこむことで、リアリティのある問い合わせを想定できます。
その次に、そのペルソナが自社サービスを利用して、あるいは情報収集の段階で、どのようなことに悩むかを考えます。この段階では、できるだけ多くの悩みを書き出しましょう。どのような些細な悩みでも、あり得ないような悩みでもメモすることがポイントです。
フローチャートを作る
ペルソナから悩みを分析し、問い合わせを想定できたら、具体的な解決方法を考えます。ポイントは、問い合わせに対する解決方法を顧客に合わせて複数用意することです。自社サービスが想定している環境や使い方を顧客が守っているとは、限りません。そのため、複数の環境やライフスタイルを想定して、解決方法を用意しましょう。
解決方法を設定したあとは、実際の業務における利便性を上げるために、顧客対応のフローチャート(手順の流れを示した図)を作成しましょう。複数の解決策を把握していなくても、フローチャートを確認するだけでスムーズに顧客対応が可能になるため、対応品質の管理を容易にします。フローチャートを作成する際は、オペレーターが理解しやすいように、具体例付きで記載することが重要です。
見やすいようにレイアウトを整える
実際の業務で利便性が高いトークスクリプトとは、詳細に作りこんであるだけでなく、情報が整理されていることです。そのため、オペレーターが理解しやすいようにトークスクリプトのレイアウトを考える必要があります。
具体策としては、トークスクリプトのマニュアル記載順を、利用頻度が高いと予想されるものから降順にする、誤った情報や鮮度が古くなった情報をあとから簡単に変更できる仕様にする、かつ変更箇所が一目でわかるようにする、などがあります。
ロールプレイングやイメージトレーニングを行い、磨きをかける
ロールプレイングは、オペレーター同士で顧客対応の模擬実習を行うことです。実際の顧客対応を詳細に再現することで、実務のなかでしか見つけられないトークスクリプトに欠けている内容や、理解できない内容などの改善点を洗い出すことができます。ロールプレイングで見つかった改善点は即座に修正し、実践と修正のサイクルをできる限り早く多く回しましょう。
また、ロールプレイングに加えて、実務や顧客対応のログを分析したり、イメージトレーニングで改善点を探すことも効果的です。そのため、マニュアルの作成以外にも、顧客対応に関するあらゆるデータを収集できるように、体制を整えましょう。
ロールプレイングやイメージトレーニングによって、トークスクリプトの推敲を行うことはとても重要ですが、顧客の立場から物事を考えることが前提として必要です。顧客のことを第一に考えてトークスクリプトを作成しなければ、オペレーター都合の内容になり、本当に顧客が解決したい悩みを解決できません。客観的にトークスクリプトを分析する習慣を身に付けましょう。
【重要】マニュアルは常に更新し続ける
コールセンターで使用されるマニュアルは、最初から完璧を求めて作成しないことが、質の高い顧客対応を提供するポイントです。これは、中途半端なマニュアルを作成するという意味ではなく、常にアップデートを繰り返しながら、完璧なものに仕上げるという意味です。
自社サービスは、どのようなサービスであっても、同じ状態で提供し続けるということはありません。常に、時代や顧客ニーズの変化に合わせてサービスも変化しています。そのため、コールセンターで取り扱う情報も刻一刻と変化しているため、定期的にアップデートをしなければ、顧客満足度の低下を引き起こしてしまいます。
加えて、コールセンターでは、ケーススタディ(過去の事例やデータから学ぶこと)がとても重要です。マニュアルのアップデートの際は、ケーススタディも実施して、トークスクリプトを最新の状態に更新しましょう。
コールセンター業務の最適化支援なら「NTTネクシア」
コールセンターの立ち上げや、運用において重要なことは、費用対効果を最大にすることです。コストをかければそれ相応の顧客対応を行えますが、顧客対応にコストをかけられない中小企業などの場合は、少ないコストで対応品質を高くする必要があります。
費用対効果を最大にするためには、まず業務プロセスのボトルネックを発見しなければいけません。コールセンターの場合は、異なる思想で設計された業務プロセスが混在しているケースが多々あり、整理されていないことがボトルネックにつながります。
業務プロセスの最適化は、コールセンター全体に渡るため、自社内ですべて改善しようとしても、人手やコストが足りないことがあります。
NTTネクシアは、独自に開発したBPR手法「アセスメント」によって、コールセンター全体の業務プロセスを細かく分解し、ボトルネックの解消と最適化を支援します。また、業務の実態把握は、データによる分析だけでなく、あらゆる立場の方へのインタビューや実務観察によって、現場の声を収集して改善策に組み込みます。
コールセンターの業務効率化に悩んでいる方は、ぜひ一度お問い合わせください。
まとめ
トークスクリプトの作成手順は、
- ペルソナ(架空の顧客)を設定する
- ペルソナの悩みを分析し、解決策を複数見つける
- 会話を始めてから終わるまでのプロセスをフローチャートにまとめる
- オペレーターが使いやすいようにレイアウトを整える
- ロールプレイングなどで推敲する
です。
マニュアルの作成で重要なことは、内容を定期的にアップデートして情報の鮮度を保つことです。常に情報更新を心がけて、時代や顧客ニーズの変化に対応できるようにしましょう。
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