書かない窓口とは?導入背景や自治体DXの事例・課題解決方法を解説

人口減少に伴い、行政サービスで働く職員と市民が減少する中で、「書かない窓口」の導入に注目が集まっています。デジタル技術を活用して、アナログな「書く」作業を減らすことで、行政サービスの品質アップや市民満足度の向上が期待できます。
本記事では、書かない窓口の概要や事例を説明するとともに、自治体DXに取り組む際の課題と解決策をご紹介します。
目次
書かない窓口とは
「書かない窓口」とは、来庁者が申請書を手書きすることなく、各種証明書の発行や住民異動届の手続きができる自治体の窓口サービスです。このサービスでは、マイナンバーカードなどの本人確認書類から情報を読み取り、職員が窓口支援システムに入力することで、申請書の記入を不要にします。
これにより、住民の手間を軽減し、手続きをスムーズに進められるという仕組みです。デジタル庁では「書かないワンストップ窓口」として推進し、自治体窓口のDX(デジタルトランスフォーメーション)を促進しています。
行かない窓口とは
「書かない窓口」に加えて、「行かない窓口」というサービスもあります。「行かない窓口」とは、住民や事業者がスマートフォンやパソコンを使い、電子申請によって役所に足を運ぶことなく、住民票の写しの交付申請や各種手続きができる仕組みです。
このサービスを利用することで、時間や場所に縛られず、原則24時間365日申請が可能となります。自治体のデジタル化を推進する「デジタル窓口」の一環として導入が進められており、住民の利便性向上と行政手続きの効率化に貢献しています。
書かない窓口が始まった背景
書かない窓口が始まった背景を、以下の2つの項目に分けて解説します。
- 社会情勢の変化
- 行政サービスならではの不便さ
それぞれ詳しく解説していきます。
社会情勢の変化
人口減少や労働力不足により、行政サービスの担い手の確保が困難になり、効率的な運営が求められています。とくに、2050年には生産年齢人口が6,000万人を下回る5,275万人と予測され、財政面での厳しさも増す中、持続可能な行政運営が大きな課題となっています。
一方で、デジタル技術の進展に伴い、行政サービスのデジタル化が加速し、地方自治体においてもDXの推進が不可欠です。しかし、従来の業務プロセスのままでは職員数の減少に対応しきれず、高品質な窓口サービスの維持が難しくなっています。
さらに、行政サービスを利用する人口の減少により財政の縮小が避けられず、今後はよりコンパクトな行政組織へと移行していく可能性が高いでしょう。
行政サービスならではの不便さ
行政サービスは、社会情勢の変化に伴う課題だけでなく、従来から利用者・職員双方にとって多くの不便さを抱えていました。住民の視点では、「何度も同じ項目を記入しなければならない」「窓口での待ち時間が長い」「複数の窓口をたらい回しにされる」といった負担が指摘されています。
一方、行政職員の立場では、「申請書ごとに記入方法を説明する手間」「内容確認にかかる膨大な時間」「業務の複雑化による属人化」など、業務負担の増加が問題視されていました。こうした課題を解決し、利用者の利便性向上と職員の業務負担軽減を両立させるため、「書かない窓口」の導入が求められるようになったといえます。
書類のデジタル化や入力の自動化により、手書きの負担をなくし、スムーズな手続きを実現することで、行政サービスの効率化と利便性の向上が期待されています。
書かない窓口の具体例

ここからは、さまざまな自治体で取り組まれている「書かない窓口」の事例を紹介します。
デジタル庁の自治体窓口DX「書かないワンストップ窓口」
デジタル庁は、自治体の窓口業務のデジタル化を推進し、「書かないワンストップ窓口」の実現をめざしています。この取り組みは、マイナポータルの活用や、各自治体の独自電子システムによる行政手続きのオンライン化を推進するものです。
書かないワンストップ窓口は、単なるシステム導入だけでなく、バックオフィスの業務改革も支援し、行政運営全体の効率化をめざしています。たとえば、和歌山県紀の川市では「自治体窓口DX SaaS」を導入し、業務の効率化を実現した事例もあります。
なお、「自治体窓口DX SaaS」とは、自治体の窓口業務をデジタル化して効率化を図るクラウド型システムのことです。自治体窓口DX SaaSは、行政手続きをオンラインで簡素化し、住民の利便性を向上させることを目的としています。具体的には、「必要な書類や申請がわからない」、「業務が属人化している」、「何度も氏名や住所を記入する必要がある」、「長時間の待機が発生する」といった課題を解決するために導入が進められています。
東京都青梅市
東京都青梅市では、令和5年2月から市役所の一部の課で「書かない窓口」を導入し、8月には6つの課で17種類の手続きと、30種類の申請に対応を行いました。
さらに、令和6年に策定されたDX基本方針「スマートローカル青梅」に基づき、青梅市では「行政サービスを変革する」「市役所を変革する」「地域社会を変革する」の3つの柱を中心に、DXの推進に取り組んでいる最中です。
令和5年11月17日に開催された「Tokyo区市町村DX Award」では、「書かない窓口推進事業」が高評価を受け、特別賞を受賞する成果を上げています。
このように、庁内業務のさらなるデジタル化を進め、「働き方改革」や「新しい生活様式」、「誰一人取り残さないデジタル化」の実現に向けて、積極的に取り組んでいることが分かります。
埼玉県深谷市
埼玉県深谷市では、職員数が1,000人を下回り、危機感を抱いたことから業務改革に着手したことをきっかけに「書かない窓口」を導入しました。市民課を対象にBPR(業務プロセス改革)を実施し、従来の業務プロセスの抜本的な見直しに取り組みました。
以前は複数枚の申請書に記入する必要がありましたが、「書かない窓口」の導入により、申請内容の確認と署名のみで手続きが完了するようになりました。その結果、住民の申請書作成の負担が軽減されるとともに、手続き漏れの防止や、より分かりやすく効率的な窓口運営が実現されているようです。
書かない窓口の課題
「書かない窓口」の導入は、職員と市民の負担軽減に効果がある一方で、アナログとデジタルが混在することによる課題も浮き彫りになっています。株式会社TKCによる市町村へのヒアリング調査によると、書かない窓口を導入した自治体では、住民が満足する場面が多い一方、未導入の自治体では「オンライン申請後に手書きが求められる」「事前に提供した情報が反映されていない」など、住民の不満も含まれていました。
この不満は、他のオンライン申請への利用意欲にも悪影響を与える可能性があり、早急な対策が求められます。ただ「書かない窓口」を導入するだけでなく住民の満足感が薄れる前に、継続的な改善が必要といえるでしょう。
NTTネクシアの自治体DX事例

「書かない窓口」を推進するためには、BPR(業務プロセス改革)などの抜本的な業務改革が必要です。NTTネクシアが支援してきた自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援事例について紹介します。
- AI画像認識とチャットボットの活用
- 市民の利便性を高めるワンストップサービスを構築
これらの取り組みにより、自治体の書かない窓口導入や業務負担軽減を効果的にサポートしています。それぞれ詳しく見ていきましょう。
AI画像認識とチャットボットの活用
NTTネクシアは、自治体の粗大ゴミ受付業務の効率化を図るため、画像認識AIを活用した粗大ゴミ受付BOTサービスの導入を支援した実績があります。受付BOTサービスの構築・導入により、粗大ゴミ収集の申し込みやお問い合わせをチャットボットが対応することで、効率的な受付業務を実現しました。
市民の申し込み時間を短縮し、利便性を向上させたことで、職員の負担軽減だけでなく市民の満足度向上にも寄与しています。デジタルツールを効果的に活用し、市民と職員双方の応対工数軽減を達成したい自治体さまは、ぜひNTTネクシアにご相談ください。
市民の利便性を高めるワンストップサービスを構築
自治体さまの新市庁舎への移転に伴い、市民へのワンストップサービス移行の課題解決を行った事例をご紹介します。NTTネクシアは、代表電話の電話交換業務と総合コンタクトセンターを統合したシステムを構築し、市民のサポート充実を図る施策を複数実施しました。単にコンタクトセンターを運営するだけでなく、イベント受付システムやFAQシステムの改修も行い、人と人のつながりが感じられるような丁寧な市民応対の実現に寄与した点がポイントです。
統合型コンタクトセンターの導入と電話応対の代行、システム改修やFAQシステムなどの新しいツールの導入など、幅広い業務改善に取り組みたい自治体さまは、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
「書かない窓口」は、マイナンバーカードなどを活用し、窓口での手書き記入を不要にするサービスです。これらのサービスは、住民の利便性向上と行政サービスの効率化を両立させることを目的としています。
「書かない窓口」の導入にあたっては、業務プロセスの見直しやシステム構築など、多くの課題が存在します。そのため、自治体DXの豊富な実績と専門知識を有するNTTネクシアを活用いただければ幸いです。
NTTネクシアは、AI画像認識やチャットボットの活用、ワンストップサービスの構築など、自治体のニーズに合わせた適切なソリューションを提供します。「書かない窓口」の導入を検討されている自治体の関係者の方は、ぜひNTTネクシアの活用をご検討ください。
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