アルコールチェック義務化の対象者を紹介!必要な対応や確認業務を効率化する方法を解説
目次
法改正に伴い、アルコールチェックの義務化対象となる車両や条件などが拡大されました。今回追加された項目に該当する事業者は法改正の影響を受けるため、変更点を十分理解し適切な対応が必要です。
そこで今回の記事では、法改正に伴う変更点や追加対象となる事業者に必要な対応について詳しく解説します。法改正により影響を受ける事業者さまは、ぜひ参考にしてみてください。
アルコールチェック義務化の対象者
2022年の道路交通法改正により、アルコールチェックの義務化対象範囲が拡大しました。今回の法改正により影響を受けるのは「白ナンバー車両」を保有または使用する事業者です。この章では以前から義務化対象であった「緑ナンバー車両」に加えて、今回追加された「白ナンバー車両」の内容を解説します。
緑ナンバーの車両を保有する事業者
運送業や旅客運送業(バス・タクシー等)の「緑ナンバー車両」を保有する事業者は、2011年5月1日からアルコールチェックの実施が義務付けられています。緑ナンバーとは、貨物の運搬や人の送迎を「有償」で行うための車両です。
2022年4月以前は、緑ナンバー車両を保有する事業者のみが対象でした。緑ナンバー車両は法改正後もこれまでと同様に、アルコールチェックの実施が継続されます。なお複数拠点を持つ場合は各事業所に検査機器を設置し、点呼時にはアルコール検知器を使って検査しなければなりません。
定員11人以上の白ナンバー車両を1台以上保有する事業者
2022年の法改正により、規定台数以上の「白ナンバー車両」を保有または使用する事業所や企業もアルコールチェックの義務化対象に加わります。そのうちの1つが「定員11人以上の白ナンバー車両を1台以上」を保有または使用する事業者です。車両の名義に関係なく、業務での使用を目的とする場合はレンタカーを利用する際もアルコールの検査が必要です。
白ナンバー車両を規定台数以上保有する事業者(業務で私用車を使用する場合も含む)
「定員10名以下の白ナンバー車両を5台以上」保有または使用する事業者は、アルコールチェックの義務化対象として追加されました。事業所が保有する社用車だけでなく、従業員名義の私用車やレンタカーを業務で使用する際もアルコールチェックの対象となります。なお、原動機付自転車を除く自動二輪車においては「1台を0.5台」として数えます。
アルコールチェック義務化の対象が拡大された背景
アルコールチェック義務化対象が、一定の条件に該当する「白ナンバー車両」まで拡大しました。対象範囲が拡大された背景には、2021年6月に千葉県で起きた白ナンバートラックの飲酒運転による死傷事故が影響しています。下校途中だった小学生の列にトラック(白ナンバー)が突っ込み、児童5人が死傷した事故です。ドライバーの男性の呼気から基準値超えのアルコールが検出されたことにより、飲酒による居眠り運転が原因と判明しています。
トラックは自社の荷物を運ぶために使われる白ナンバー車両であったため、アルコール濃度の測定は未実施でした。事故後にドライバーの飲酒検査を実施していないことが問題視され、白ナンバー車両を含むアルコールチェックの義務化対象の拡大につながっています。
アルコールチェックの義務化の概要
アルコールチェック義務化は、段階的に実施されます。この章では、各段階における必要な対応を紹介します。またアルコールチェックの方法や確認事項、さらには実施しなかったときの罰則についても詳しく解説するので、正しく理解しておきましょう。
アルコールチェック義務化の対応スケジュール
白ナンバー車両を保有または使用する事業所や企業に対して義務付けられる業務は、以下のとおりです。
【2022年4月以降に義務化された項目】
- 運転前後にドライバーの酒気帯びを目視など(原則対面)で確かめる
- 点検後結果を記録して1年間保存
ドライバーの酒気帯びを確かめる際は、顔色や吐く息のにおいなどを検査します。運転前後のアルコールチェックは、原則対面と定められています。しかし直行直帰や出張など、運転者が遠隔地にいる場合は対面での確認が難しいです。
そのためビデオ通話のカメラ越しにチェックする「IT点呼型」と電話応答の様子で確認する「電話点呼型」という方法が認められています。そのため、アルコールチェックを外部に委託して遠隔地から実施することも可能になりました。
【2023年12月から義務化される予定の項目】
- アルコール検知器を使って酒気帯びを確かめる
- アルコール検知器を常に使える状態に保持
目視などによる点検に加えて、アルコール検知器を使った酒気帯びの検査が義務付けられます。対面での検査が不可能なときは携帯用のアルコール検知器を用意し、ドライバー本人から報告してもらわなければなりません。
アルコールチェック時の記録事項
アルコールチェック時は、1年間の記録保存が義務付けられています。決まった様式はありませんが、道路交通法施行規則に従い以下の項目の記録が必要です。
- 確認者名(安全運転管理者)
- 運転者の氏名
- 自動車のナンバー
- 点検した日時
- 確認方法( アルコール検知器使用の有無、 非対面のときは検査方法の詳細を記載)
- 酒気帯びの有無
- 指示事項
- その他必要な事項
なお記録の保存方法や記録簿の指定はなく、紙とデータどちらの保管でも問題ありません。
アルコールチェックを怠った際の罰則
現時点では直接的な罰則の定めはありませんが、安全運転管理者の解任が命じられる可能性があります。また点検を怠った際のリスクとして考えられるのは、法令違反の発生や事業所の信頼低下です。アルコールチェックを怠ることにより、飲酒運転を見逃すリスクが高まります。飲酒運転は「酒気帯び運転」もしくは「酒酔い運転」の2種類があり、どちらに該当するかで罰則が異なります。
なお、飲酒運転で罰則を受けるのはドライバーだけではありません。同乗者や車両提供者も同等の罰則を受けるため、事業所の代表者や従業員の責任も問われます。また飲酒運転による事故を起こした場合は、罰則だけでなく社会的信用の失墜にもつながります。アルコールチェックは飲酒運転防止の一環として義務付けられているので、従業員への教育や運用体制の整備など会社全体での適切な対応が必要です。
アルコールチェック義務化の対象となる事業者がすべき3つの対応
アルコールチェックの義務化対象となる事業者は、以下の3つの対応が必要です。
- 安全運転管理者の選任
- アルコール検知器の導入
- 飲酒検査の運用体制整備
それぞれの対応ポイントを解説するので、アルコールチェックの義務化対象となる事業者さまは、ぜひ参考にしてみてください。
安全運転管理者の選任
以下に該当する事業所は「安全運転管理者」の選任義務があります。
- 「定員11人以上の白ナンバー車両を1台以上」を保有または使用する事業者
- 「定員10名以下の白ナンバー車両を5台以上」保有または使用する事業者
安全運転管理者とは、企業や事業所が安全な運転環境を維持するために、ドライバーの教育や運転状況のモニタリングなど安全対策の策定・実施を担当します。
安全運転管理者の選任義務が発生する企業や事業所は、自動車を使用する事業所ごとに必ず1名選任しなければなりません。なお、対象車両が20台以上になるときは「副安全運転管理者」の選任が必要です。副安全運転管理者は、20台増えるごとに1名追加しなければなりません。
アルコール検知器の導入
アルコールチェックの義務化対象となる事業所は、国家公安委員会が定める「アルコール検知器」を用意しなければなりません。2023年12月から義務化される項目の中に「アルコール検知器を常に使用できる状態に保持」することが定められています。理由は、アルコール検知器は適切なメンテナンスが必要な機器だからです。
なお直行直帰などを理由に非対面による飲酒検査を行うときは、携帯用のアルコール検知器の用意も必要です。
アルコールチェックの運用体制整備
新たに飲酒検査に関する業務が加わるため、実施方法や記録簿の作成など運用体制を整備する必要があります。また事業所によって環境が異なるため、勤務体制や車両使用頻度などに合わせて実施方法を考えなければなりません。飲酒検査に時間がかかるとドライバーの不満や負担につながるため、適切かつ効率よく実施できる体制を整えることが大切です。
アルコールチェック義務化に対応するため、外部委託を検討している事業者さまがいらっしゃるのではないでしょうか。外部委託する場合は、BPOとアウトソーシングの2つの選択肢があります。関連記事の「BPOとアウトソーシングの3つの違い!導入メリット3選と受託事業者選定のポイントを解説」で双方の違いを詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
アルコールチェック義務化における3つの課題
アルコールチェックの義務化により、担当者の負担増加や体制整備のためのコスト増加などさまざまな課題が考えられます。今回の法改正により追加対象となる事業者さまは、それぞれの課題についても十分理解しておきましょう。
担当者の負担増加
安全運転管理者の業務は点呼や日常点検以外にも、運行計画の作成・異常気象時の安全確保の措置など多岐にわたる業務を行っています。飲酒検査の実施が加われば、マニュアルやオペレーションの整備と運用の問題点の改善など、業務量の増加が考えられます。
また紙やエクセルなどによって飲酒検査の管理を行う場合、記入や管理に手間がかかるため担当者の負担増加は避けられません。ほかにも複数の拠点を持つ事業者は、回収や集計作業などに時間がかかります。場合によっては、土日祝日や夜間帯に運転が生じることがあり、その際の安全運転管理者への負担も考慮する必要があります。
なりすましや虚偽の報告による不正行為
事業所を経由せずに直行直帰で業務を行う場合は、対面での飲酒検査ができません。その場合は、運転者が各自で飲酒検査を行うことになります。管理者の目が行き届かないことで、なりすましや虚偽の申告による不正行為が行われるリスクが高まります。
機器の導入や体制整備にかかるコスト増加
2023年12月以降は、アルコール検知器での検査が義務付けられます。アルコール検知器はセンサーの使用期限があるため、本体購入費に加えてメンテナンス費用が必要です。
またデータ管理やメモリー機能付きなど、拡張性が備わっている製品は価格が高い傾向にあります。さらに検査結果を管理するためのシステム導入や運転日誌との連携など、飲酒検査の運用体制整備にかかるコスト増加が考えられます。
アルコールチェック義務化に外部委託で対応する場合は、BPOの活用がおすすめです。BPO業者委託先選定のポイントを解説した資料を以下のリンク先からダウンロードできるので、ぜひご活用ください。
アルコールチェックを効率化する2つの方法
アルコールチェックの義務化対象になると、担当者の業務負担増加や運転者の生産性低下を招く可能性があります。そのため、事業所は適切かつ効率の良い飲酒検査の実施が必要です。この章では、飲酒検査を効率化する方法を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
アプリの活用
アプリを活用することで、スマートフォンを使った飲酒検査の実施が可能です。直行直帰の勤務形態でも、運転者が携帯用のアルコール検知器を使用して結果をアプリで報告できます。また、アルコール検知器での測定や結果の記入をすべて担当者に任せると、検査を受けるための待ち時間が発生します。
運転者が各自で結果を記入できる仕組みを作れば、チェック担当者の業務負担軽減や待ち時間の短縮にも効果的です。紙やエクセルでは回収が必要ですが、アプリなら入力後すぐに共有できるので管理の手間が省けます。
アルコールチェック代行サービスの導入
飲酒検査を行うのは必ずしも安全運転管理者でなくても良いとされており、業務を補助する者による酒気帯び確認の実施が認められています。「業務を補助する者」が自社の従業員でなければならないとの定めもないため、飲酒検査は外部企業に業務委託できます。
アルコールチェック代行サービスでは、酒気帯び確認から検査結果記録の入力・管理までを一括して任せられるのがメリットです。代行サービスを利用することで、アルコールチェック義務化における課題解決や業務負担軽減が期待できます。
アルコールチェック義務化への対応でお困りの企業さまは「NTTネクシア」へ
道路交通法改正により、アルコールチェックの義務化対象範囲が拡大します。「白ナンバー車両」を保有する事業者が新たに追加されるため、該当する企業や事業者は適切な対応が必要です。新たに対象者となることで、業務負担やコスト増加が予想されます。
NTTネクシアでは事業所ごとの事情や課題を踏まえ、コストを抑えて充実した支援を提供します。例えばすでにアプリを活用している場合は、入力された結果を確認しつつ電話による飲酒検査の実施が可能です。
音声と映像による酒気帯び確認を行うので、より対面に近い形での飲酒検査を遂行できます。アルコールチェック義務化への対応でお困りの場合は、さまざまなニーズに合わせて支援する「NTTネクシア」へご相談ください。
参照文献:警視庁 「安全運転管理者制度の概要」
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