【これで解決】コールセンターのAHTは生産性向上に繋がる指標【ATT・ACWについても解説】
近年、消費活動の変化によりコールセンターの重要性が見直されています。コールセンターが正常に運営されているかを測る指標は数多く存在し、各企業の課題解決に役立てられます。AHTはその中の1つで、生産性を測る指標です。
AHTは短い方が良いと言われていますが、時間ばかりを意識すると顧客満足度に悪影響を及ぼす恐れがあります。AHTを計測・管理する際は、品質の低下に注意しましょう。そこで今回の記事では、AHTを管理する重要性や期待できる効果について解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
コールセンターのAHT(平均処理時間)とは?「ATT」と「ACW」についても解説
「AHT(平均処理時間)」とは、コールセンターの生産性を測る際に使用される評価指標の1つです。AHTは「ATT」と「ACW」によって成り立っており、正しく測るためには分けて考える必要があります。ここでは3つの指標について、詳しく見ていきましょう。
AHT(Average Handling Time)とは
AHTとは、1コールあたりの応対(電話を受けてから後処理業務終了まで)に要した平均時間を指します。AHTは2つの指標で構成されており、計算式は以下のとおりです。
AHT(平均処理時間)= ATT(平均通話時間)+ ACW(平均後処理時間)
このようにAHTは、通話に要した時間の平均値である「ATT」と、通話完了後の入力作業や手続き等に要した時間の平均値である「ACW」の合計で導き出されます。AHTはオペレーター個人だけでなく、コールセンター全体の生産性を表す指標です。AHTの数値を下げるためにはATTとACWの見直しが必須であり、どちらに問題があるかによって対策が異なります。また、AHTはコールセンターの収支改善のための重要な指標であり大きな課題です。ほかにも、必要なオペレーター数を割り出すための判断材料として使われています。
ATT(Average Talk Time)とは
ATT(平均通話時間)とは、ユーザーとの通話に要した平均時間を指します。ATTだけでも生産性を測ることは可能ですが、モニタリング結果や入電傾向等のほかの指標と組み合わせるのが一般的です。1コールに対する通話時間が長い場合、一定時間内に対応できるコール数は少なくなり、コールセンターの生産性の低下を招きます。接客時間が伸びる要因は、ユーザーあるいはオペレーターの話が長くなることが考えられます。
解決するための手段として、トークスクリプトの充実やマニュアルの見直しを行うコールセンターが多いです。一方で無理なATTの短縮を行うことで、ユーザーからの問い合わせや相談に十分な対応ができず、顧客満足度の低下に繋がる危険性があります。ATTを改善して生産性が向上しても、顧客満足度が低下しては意味がありません。通話時間の短縮を掲げつつ、正確で丁寧なサービスを維持することが重要です。
ACW(After Call Work)とは
ACW(平均後処理時間)とは、ユーザーとの通話終了後にオペレーターが行う事務処理に要した平均時間を指します。事務処理で行う主な業務は、対応記録の入力やユーザーの依頼に応じた手続き作業です。ACWはオペレーターが行う作業時間であり、ユーザーや問い合わせ内容に影響されることが少ないため、コールセンター内で主体的な対策を実施できます。
ACWが長くなる原因として、以下の3つが考えられます。
- 事務処理業務が煩雑
- 上司や他部署への確認が頻繁に必要
- 入力項目が多い
ACWの改善を図る際は、処理すべき内容の見直しと改修が重要です。せっかく情報を入力しても、活用されていないのでは意味がありません。不要な入力項目の削除や、AIを活用した自動入力の導入などによりACWの短縮が期待できます。オペレーター業務の負担を減らしつつ、ACWの改善を実施することが理想的です。
AHTはコールセンターの生産性を測る指標
AHTは、1コールにかかる所要時間の平均です。AHTが低ければ低いほど、ユーザーからの入電に効率よく対応できていると判断できます。たくさんの問い合わせに対応し、ユーザーの抱える問題を解決できるコールセンターは、生産性の高い部署と言えるでしょう。近年は、電話のつながりにくさを課題とする企業は多いです。AHTの短縮により多くの入電を受けられるようになれば、コールセンターの応答率が高まり顧客満足度が向上すると考えられます。
さらに、AHTの改善によりオペレーター1人あたりの顧客対応数増加が見込まれるので、コールセンターの人員削減が可能です。コールセンターでは人員不足が課題となっている企業は多いため、少ないオペレーターで多くの問い合わせを受けられるということは大きなメリットでしょう。AHTの主な目的は1コールの処理時間の合計ですが、電話以外の問い合わせチャネルを用意している場合では、ほかのチャネルとの比較検討にも活用できます。
コールセンターのAHT短縮で期待できる効果3選
コールセンター運営において、電話のつながりにくさを課題とする企業は多いでしょう。AHTの短縮は、業務効率化や顧客満足度の向上が期待できるとして注目されています。ここでは、AHT短縮による主な3つの効果について詳しく見ていきましょう。
生産性の向上
AHTを短くし回転率を上げることで、オペレーター1人あたりの対応可能件数は増加します。たとえば、10分のAHTであれば1時間に6件電話を受けられます。そこで10分かかっていたAHTを5分に抑えることができたとすれば、受けられるコール数は2倍となり1時間に12件です。各オペレーターが勤務時間内に受けられるコール数が増えることで、少ない人員で多くの問い合わせに対応できます。
また、AHTを計測し所要時間を管理することで、業務効率化に関する対策を積極的に実施できます。想定される1日の問い合わせ数に応じたシフト調整や、繁閑差に合わせた人員の増減が可能です。AHTの把握は単なる時間短縮のためだけでなく、コールセンター運営全体の生産性向上に貢献します。
コスト削減
AHTを減らし、対応できる問い合わせ数が増えることで、入電数に合わせて人員を減らせるため人件費の削減に繋がります。
たとえば、AHTが10分のコールセンターに1時間あたり60件の入電があった場合で考えてみましょう。1人のオペレーターが、1時間に受けられる入電数は6件です。1時間あたりの入電数は60件なので、最低でも10人のオペレーターが常駐していなければなりません。
しかし、AHTを6分に減らすことができれば1時間で10件受けられることになり、6人で業務をこなすことが可能です。この会社ではオペレーターを4人減らすことができ、大幅な人件費カットが可能となります。
ここで紹介した計算はあくまで例ですが、AHTを下げることで少人数での勤務が可能となることが分かります。また、通話時間が減ることで通信費の削減に繋がるため、コールセンター運営にかかるコストカットに貢献します。
顧客満足度の向上
コールセンターにおける電話のつながりにくさは、顧客満足度の低下を招く要因の1つです。AHTが短縮され1コールにかかる所要時間が減ることで、電話がつながりやすくなりユーザーのストレスを軽減できます。
ユーザーは少しでも早く問題を解決したいと考え電話をかけているため、不備なく迅速に対応することが大切です。短いやり取りのなかでユーザーの抱える課題を正確に把握し、スピーディーに解決することで顧客満足度の向上に繋がります。
コールセンターのAHTを短縮する3つの方法
この章では、コールセンターのAHT短縮に有効な3つの方法を紹介します。
- オペレーターの教育
- 運用ルールの見直し
- システム導入
AHTの品質管理を行う際は、時間短縮だけに気をとられないことが大切です。応対品質を落とさずAHTを改善し、効果的にコールセンターを運営する方法について詳しく見ていきましょう。
オペレーターの教育
コールセンターではユーザーからの問い合わせ内容を正確に把握し、適切に回答することが大切です。短い時間でユーザーが求める回答を行うには、オペレーターの教育が欠かせません。また、スキルにばらつきがあると特定のオペレーターに電話が集中してしまうため、コールセンター全体の生産性が低下します。
まずは、会話の録音やモニタリングを行い、各オペレーターの課題を洗い出すことが必要です。見つかった課題に対して、目標時間の設定やトークスクリプトを活用してトレーニングを行い、各オペレーターの応対スキルを均一化します。処理業務に関しては、タイピングを速くする練習や文章力向上の研修などで、個人のスキルを高めていきましょう。
運用ルールの見直し
業務マニュアルをしっかり作り込むことで、AHTの短縮に繋がります。たとえば、よくある問い合わせを分析してオペレーター用のFAQを用意しておきましょう。同じ質問に対して誰もが同じように接客を行えば、品質を落とすことなくスムーズな課題解決が可能です。また、トークスクリプトを作成することで、経験の浅い新人オペレーターでもベテランに近いレベルで対応できます。
通話終了後に行う処理においては、マニュアルに沿って打ち込むだけにすることで、入力内容に悩むことなくスピーディーに作業を行えます。問い合わせ対応用のトークスクリプトと処理業務用のマニュアルを整備することで、AHTの短縮が期待できるでしょう。
システム導入
顧客情報や購入履歴などの確認ができるCTIというシステムを導入することで、ユーザーの待ち時間をなくしスムーズな対応が可能です。パソコン画面を見れば必要な情報が得られるため、確認のために保留する必要がなく通話時間の短縮が期待できます。
CTIでは、自動音声応答機能や通話録音機能が備わっていることが多く、ATTやACWを効率よく短縮できます。ATTやACWにかかる時間を減らせるCTI導入は、AHTの短縮に有効な方法です。CTI以外にも、CRMや顧客管理システムなど業務効率化を図るシステムはたくさんあるので、自社の課題に合わせて選定すると良いでしょう。
コールセンターのAHTを管理する際の注意点
コールセンターのAHTをチェックする際は、顧客満足度の低下を招かないよう気をつけましょう。AHTを減らすことは、コールセンター運営における生産性向上の重要なポイントです。しかし、時間短縮にばかり気を取られ過ぎると、顧客対応がおろそかになる可能性があります。AHTの短縮は、1コールにかかる時間を減らすことだけが目的ではありません。
時間短縮を意識しすぎるあまり、丁寧な応対ができなくなっては意味がありません。効率の良い問い合わせ対応を行うことは大事ですが、オペレーター自身が落ち着いて接客できる環境を整えることも重要なポイントです。時間効率を意識するあまり、プレッシャーを与えるだけにならないよう気を付けましょう。
AHTを正しく管理して顧客満足度の高いコールセンター運営を実現しよう
コールセンターの生産性向上には、AHT(平均処理時間)の計測が必要不可欠です。AHTは、平均通話時間であるATTと、平均後処理時間であるACWで構成されています。正確な管理を行うためには、両方を意識しなければなりません。
AHTを減らすことは生産性の品質向上に必要ですが、時間に縛られた対応は機械的になりやすく、冷たい印象を与えてしまう場合があります。機械的な対応は顧客満足度の低下に繋がる可能性があるため、AHTを管理する際は十分注意しましょう。コールセンター運営でお困りの方は、コストと品質のバランスが取れた業務プロセス設計を提供している「NTTネクシア」へお気軽にご相談ください。
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